身に覚えのない請求について、ある顧客が問い合わせたとします。適切なチームにつながったものの、調査には追加情報が必要です。顧客は事情を説明し、電話を終えて回答を待ちます。ところが進捗を確認しようと再び電話すると、最初から説明し直さなければなりません。
コンタクトセンター側から見れば、一つひとつの対応は迅速だったかもしれません。それでも顧客にとって問題は未解決のまま。対応を前に進めるための手間も、顧客自身にかかっています。
AIはこの体験を変える一助になります。問い合わせを伝えやすくし、適切な回答を見つけ、権限の範囲内で手続きを進め、必要なときには担当者に対応の経緯を引き継ぐ。顧客がその違いを実感できるかどうかは、最初の応答の速さだけでなく、一連の対応がどうつながるかにかかっています。

顧客が何を求めているかを理解する
顧客が問い合わせ内容を明確に分類して伝えるとは限りません。「請求に問題がある」という言葉は、料金の内訳が分からない、二重請求に気づいた、あるいは支払いが反映されていないといった、さまざまな意味を持ちます。それぞれ担当チームも必要な対応も異なるかもしれません。
AIエージェントは、普段の言葉で伝えられた問い合わせを受け止め、必要な質問を返すことで対応を支援できます。顧客は長いメニューから選ぶ代わりに、自分の言葉で状況を説明できます。意図が分からない場合には、聞き直すか、担当者につなぐ選択肢を残すことも大切です。
最初のやり取りは、その後の対応を左右します。請求への異議を一般的な料金の質問と取り違えれば、請求方針を正確に説明しても顧客の役には立ちません。何を求めているのかを理解してこそ、次の回答に意味が生まれます。
これはチャネルが変わっても同じです。顧客がチャットで問い合わせを始め、話が複雑になって電話に切り替えることもあります。音声とデジタルの両方でAI活用を検討する際は、それぞれの窓口を使いやすくするとともに、システムが対応できる範囲で経緯を引き継ぎ、チャネルを変えても説明し直さずに済むようにすることが目標になります。
顧客の状況に合った回答を届ける
問い合わせの内容が分かったら、顧客にとって役立つ情報を届ける必要があります。一般的な案内で十分な場合もあります。たとえば請求額の調整方法を説明すれば、簡単な疑問は解消するかもしれません。一方、特定の請求について知りたい顧客には、自分の口座に何が起きているのかを伝える必要があります。
AIは、承認済みのサービス情報から適切な回答を探し、分かりやすく説明するのに役立ちます。企業が口座や案件情報へのアクセスを認めている場合には、その情報を踏まえた回答も可能です。一般的な方針の説明と、個別の口座について確認した回答は区別しなければなりません。
たとえば、担当エージェントが一般的な調査の流れを説明し、必要な本人確認を終えた後に、顧客の既存の問い合わせ状況を確認するケースが考えられます。状況を確認できない場合は、推測で補うのではなく、その旨と確認方法を伝えることが有益です。
担当者にも信頼できる情報は必要です。人が対応する場合、AI Copilotは承認済みの案内を探す支援ができます。回答を確認し、顧客への伝え方を判断する責任は担当者に残ります。一度の会話の中でサービス規定、商品情報、顧客の状況を照らし合わせる必要がある場面で役立ちます。
回答だけで終わらせず、次の対応につなげる
説明だけで解決する質問もあれば、変更手続きや調査、フォローアップが必要なものもあります。身に覚えのない請求なら、異議を記録し、その後の流れを説明する必要があるかもしれません。申込状況を尋ねる顧客には、不足書類を伝えることが次の一歩になります。
適切な権限とシステム連携があれば、AIエージェントは状況確認やフォローアップ依頼の作成といった定型的な対応を行えます。会話の内容が、サービスチームの次の行動につながります。実行できる範囲は、業務ルール、利用できるシステム、その手続きに必要な本人確認によって異なります。
人が引き継ぐべき場面もあります。請求への異議には調査が必要かもしれませんし、顧客が例外的な対応や担当者との会話を求めることもあります。そうしたとき、AIエージェントは内容を記録して適切なチームへつなぐことで、顧客が自分で問い合わせ先を探す手間を減らせます。
サービス責任者が最初の活用場面を選ぶ際は、頻度が高く、完了の基準が明確な問い合わせに目を向けるとよいでしょう。たとえば、申込状況と残っている手続きを伝える対応です。「顧客サービスを自動化する」という大きな目標よりも、顧客が必要な情報を得られたかを判断しやすくなります。
AIから担当者へ、会話を途切れさせずに引き継ぐ
人による対応が必要になったときも、速さだけでなく会話の継続性が重要です。請求の問題をすでに説明した顧客が、次の担当者にすべてを話し直す必要はないはずです。
引き継ぎ先には、問い合わせの内容、収集済みの情報、実施済みの対応を、組織のアクセス権限や確認ルールに従って渡します。担当者はその情報を確認し、不足分を聞き取り、人の判断が必要な部分に集中できます。すぐに担当者が対応できない場合も、その後の流れを顧客に明確に伝える必要があります。
電話を転送するだけでは、こうした継続性は生まれません。コンタクトセンターにおけるAIから担当者への引き継ぎでは、移行を円滑にするための情報や担当の持ち方を詳しく紹介しています。
その後のフォローアップにつなげる
通話が終わっても、問い合わせが完了したとは限りません。技術チームによる障害調査や書類の確認が残ることもあれば、顧客が提案を検討する時間を必要とすることもあります。次に対応するチームが適切にフォローできるだけの情報を、会話から残すことが大切です。
保険更新の案内を例に考えてみましょう。手続きを進めたい契約者もいれば、担当者に質問したい契約者もいます。どちらの電話も単に「完了」と記録するだけでは、次に何をすべきか分かりません。
Lifenet Insurance(ライフネット生命)は、保険更新の案内にDyna.AiのVoice Agentを活用し、顧客の意向を把握して会話をフォローアップ用に分類しました。チームはその情報を次の対応の優先順位付けに活用でき、更新に関する判断は引き続き担当者が担います。契約者への連絡だけでなく、その後の業務につながる情報を残すことにも価値があります。
冒頭の請求に関する例も同じです。顧客から電話があったことを記録するのは第一歩です。さらに問題の内容、依頼された調査、進捗を伝える方法まで残せば、チームも顧客も次に何が起こるかを把握できます。
最初の応答だけでなく、顧客体験全体を測る
サービス責任者は、こうした改善が実際に顧客体験を良くしているかを知る必要があります。応答の速さや通話時間は運用上の参考になりますが、それだけでは問い合わせの根本的な解決を示せません。
まず、対応全体の結果を見ます。状況確認なら、正しい情報を顧客に伝え、残りの手続きを理解してもらえたでしょうか。請求への異議なら、内容を記録して調査し、約束した進捗を伝えられたでしょうか。会話が終了しただけですべてを「解決済み」とするのではなく、対応内容に合った解決の基準が必要です。
次に、途中で生じた負担の兆候を確認します。
- 再問い合わせ: 同じ問題で顧客が再び連絡していないか。長い対応の中では通常の確認もありますが、回答やフォローが不十分な場合もあります。
- 引き継ぎの質: 担当者は必要な経緯を把握して会話を続けられるか。実際の引き継ぎを抽出して確認すると、不足した情報が見えてきます。
- 顧客の声: どの部分が分かりにくく、負担になったか。業務上の記録が完了していても、フィードバックから問題が見つかることがあります。
似た種類の問い合わせを同じ期間で比較し、サービス記録と顧客の声を併せて確認しましょう。AI導入後に結果が変化した場合も、ほかの業務変更を調べてから、AIがどの程度影響したかを考える必要があります。
顧客との会話を、解決への一歩に
顧客が問い合わせるときに求めているのは、問題を理解してもらい、次に何が起きるかを知ることです。AIが直接回答する場合も、担当者が会話を引き継ぐ場合も、その体験を安定して届けることにAIの価値があります。
Dyna.AiのCustomer Service Agentは、承認済みの情報と顧客の状況をサービス対応に活用し、必要に応じて担当者へつなぎます。より明確な回答と次の対応を実現する方法について、Customer Service Agentの詳細をご覧ください。
